deracine

好きだから縛りたい

愛しているから束縛したい

 

 

「雅行」

 熱っぽい声で洋介が耳元で囁く。

それが合図。

 雅行は後ろから自分を包み込むように抱く洋介に身を預け、小さく頷いた。

 今日は朝から康平が出かけているのでこの部屋には雅行と洋介の二人きりだ。三人で借りた下宿。康平に罪悪感を感じないわけではない。だが二人きりになると求めてしまう。

 冬休みに二人体を繋げてから一ヶ月。

残り僅かとなった下宿生活。

 だからと言って退学を取りやめた雅行との離れるわけではない。

 三人とも進学が決まっていた。

 下宿先は三人それぞれに部屋を借りることになっているが、これからも二人の関係は続くのだろう。

 洋介の腕に抱かれながら雅行は口の端を僅かに上げた。

「ん…洋介…」

 洋介の指が白いウールのシャツのボタンを外していく。

 ひんやりとした外気に肌が触れ、菊池は小さく身を震わせた。

「寒いか?」

 この部屋には暖房器具と呼べるものはほとんどない。

 お世辞にも温かいとは言えない部屋で肌を晒しているのだ、寒くないと言えば嘘になる。

「洋介が暖めてくれるのだろ」

 雅行は洋介の胸に頬を擦りつけ甘えるように呟いた。

 

 あの日までは考えられなかった。

 こんな風に洋介に抱かれる日が来るなんて。

 

 望んでいなかった訳ではない。

 いや、むしろずっと切望していた。

 理性の箍を解き放ち、欲望のままこの広い胸に抱かれてみたい。

 初めて自分の想いを自覚した時は驚きより、自分に対する嫌悪感でいっぱいになった。

 洋介は同性で親友だ。

 その洋介に自分は性的な欲望を抱いている。

 しかもまるで女のように彼に惹かれ、その体に触れたいと望んでいるのだ。

 そういった性的感情が自分に芽生える等、思ってもみなかった。

 どちらかといえば雅行は恋愛とかそういったことに対する欲求は淡白な方だった。高校時代から彼女が欲しいとは思わなかったし、大学に入ってからも毎日忙しく、そう言ったことには一切興味がなかった。むしろ時間がもったいないと思っていたほどだ。

 女に費やす時間があるのなら少しでも自分を磨くことに使う。

 頭脳も運動神経も学年でかなり上位にいる雅行だったが、体力は劣っている方だ。だから休みの日はデートなんかするよりも、部屋でじっと本でも読んで体を休める方が自分にとってよっぽど有意義な時間だと思っていた。

 角松や尾栗と共に下宿を借り、二人が外出している時も雅行はほとんど下宿から出ることはなかった。

 本当に休日は体を休めることだけに使った。

 そんな自分が今は何よりも欲望で頭をいっぱいにしている。

 

信じられない。

だけど、体は洋介の愛撫に素直に反応し、熱い吐息が漏れ始める。

 露になった肌に洋介が唇を落としていく。

 胸の突起に触れると、雅行の体がビクンと跳ね上がった。

「あ…洋介……」

 雅行は洋介の頭を抱えるように腕で包み込んだ。

 触れられる度にビクビクと体が揺れる。

 

 洋介への想いを自覚してから雅行の目は彼を追い求めた。

 彼の些細な仕草や言動に瞳を奪われ、情を持て余す。 

 洋介は彼女をどんな風に抱くのだろう。

 そんなことを考えて体を熱くしたりもした。

 丁度そんな頃、自分の中でこの想いとは別な悩みが心を揺るがせていた。

 切欠は湾岸戦争だった。

 その戦争に自分の中、疑問が生まれた。

 自衛官に対する疑問。

それはいつしか自分の未来への疑問へと変わった。

 だが、それを真っ直ぐ前を見つめている二人の親友に話せない内に時だけが過ぎていき……。

 不運は重なるもので、兄弟のように一緒に育った従兄弟の訃報が菊池の心に暗い影を落としていった。

 影は広がり闇になる。

 自分の中で一つの結論を出した時、この想いにも決着をつけようと考えた。

 ただ告白して去る。

 それで良いのか?と自分に問いかけた。

 いい親友のまま別れる。

 一番、それが良い。

 だけど―――――――――。

 

「あああ……」

 思考を遮るように洋介の手が、雅行の敏感な部分に触れる。それは既に熱くなり、洋介の手の中で震えている。

 優しく上下に扱くと先端からトロトロとした雫が零れ落ちる。

「よう…すけ…」

 その蜜を掬って、洋介は更に奥に指を忍ばせる。雅行の蜜で濡れた指先を、まだ固く閉ざしている蕾に押し当てた。

「あああ……」

 雅行は鼻に掛かった声を上げた。

 まるで自分の声じゃないみたいな甘く濡れた声。

 自分にこんな一面があるなんて思わなかった。

 だけど心地良いと思う。

 ゴツゴツとした洋介の指が蕾を割って中に押し入ってくる。その圧迫感に雅行は背をそらせた。

 洋介の鎖骨辺りに快楽を逃すようにグリグリと頭を押し付ける。

 そんな雅行に洋介は笑って、更に奥へと指を進めた。

「雅行、気持ち良いか?」

 熱い内壁を掻き分けられ、中を思うまま弄られる。クチュクチュと淫猥な音を立て始める頃、洋介は更に指を増やし、雅行の敏感な箇所を何度も引っ掻くように刺激した。

「ああ…ん…よう…すけ……」

 雅行は堪らず声を上げる。

「あ…もう……」

 三本の指が易々と入る頃になると、別な要求が生まれる。

 受け入れることに慣れ始めたそこは、指などでは満足できず、もっと熱く硬いものを求めてヒクヒクと震える。

「雅行良いか?」

 洋介の言葉に雅行はコクコクと頷いた。

 火傷しそうなほど熱いものが雅行のそこに宛がわれる。

 一気に貫かれ、雅行の体が大きく跳ね上がった。

 

 深い闇の広がった心が思わぬ方向へ暴走した。

 嘘をついて洋介を呼び出し、一晩拘束した。

「一日だけで良いから独占したい」などと尤もらしいことを言って―――――――。

 告白して、拘束して。だけど触れないと約束して。

 それが思わぬ方向に転がった。

 洋介の方から雅行に触れてきたのだ。

 

 あれから―――――――。

 関係は続いている。

 今では洋介の方から求めて来て体を繋いでいる。

 

「よ…すけ……」

 激しい律動に身を焦がしながら、雅行は愛しい人の名を呼んだ。

同時に中を弄る洋介のものを締め付ける。洋介は顔を歪ませて笑うと、雅行の腰を一旦高く持ち上げた。そして一気に奥まで貫く。

同時に打ちつけられた熱い放流を雅行は恍惚とした表情で受け止めて、自らの欲望を洋介の手の中に解き放った。

 

 

 のめりこんでいく。

 広い洋介の胸に抱かれながら雅行は思う。

 心が縛られていく。

 同時に相手の心も縛っていく。

 もう引き返せない。

 心地よい脱力感に身をゆだね、雅行はゆっくりと瞳を閉ざす。

 その口には僅かに笑みが浮かんでいた。

 

 

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雅行…怖(汗)何かスラスラ書けちゃって……30分足らずで書いたんですけど……
なんか読み直してみると怖い…(汗)こんなものを送りつけてすみません。


味友のajitoのrin様に寄贈させて頂きました。
rin様がこの駄文に素敵な挿絵をつけて下さっております。ぜひご覧下さい。
味友のajito様は
コチラ


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